小樽の鳥観図その2
運河館第一展示室に展示している、吉田初三郎作「鳥観図 小樽」は微細に表現された昭和6(1931)年当時の小樽市街を鮮やかに描いた図で、運河館の展示の中でも人気の高いものです。

裏面には…
ところで、この図には裏面があるのをご存じでしょうか。
当館が所蔵するものは、小樽の老舗旅館「キト旅館」の表紙がついたもので、小樽の概要が掲載されています。昭和6年当時の小樽が、「小樽といえば」と考えるものが並んでいます。もちろん統計などの部分も面白いのですが、カットとして選ばれている写真のチョイスが興味深いです。


旭山もしくは西陵中学校付近からの市街俯瞰のほか、銀行、艀が並ぶ運河、港内での荷役作業、公会堂、水源地、北海製罐、水天宮、尼港殉難碑、住吉神社、手宮洞窟、築港の扇形機関車庫です。(銀行街の写真は「色内町ビジネスセンター」)となっています。)
奥付を見ると、発行人は小樽市役所となっていますので、おそらくこのチョイスにも地元の役所が思う「小樽らしい」ポイントが選ばれていると考えています。

ちなみに「著者・印刷者」は名古屋市の住所で「吉田初三郎」、「印刷所」は初三郎が経営したプロダクション「観光社」となっています。つまり、小樽市役所が、初三郎に依頼、もしくは委託制作したもので、小樽市には製品が納入されたと思われます。さて、キト旅館はどのようにかかわったのでしょうか?

表紙にキト旅館と印刷され、携行できる形になっています。小樽市役所から中身だけ買い取って、お土産用として販売したのでしょうか?価格も書かれていませんので、判然としません。