防波堤が市民に寄せる、百年の片思い。

「両腕で抱きしめるように小樽の町を守っている防波堤」その存在は、ちゃんと市民に届いているのだろうか。防波堤が市民によせる儚い想い、それはまるで、百年の片思い。

 日本初となるコンクリート製の外洋防波堤(北防波堤)が小樽に誕生したのは110年以上も前の出来事です。そんな防波堤によって、今でもこの町は守られ続けています。

 かつて、小樽の港に伸びる二本の防波堤を“抱きしめるように守る両腕”と喩えた作家(伊藤整/若き詩人の肖像)がいました。
 この文学的アプローチをヒントに、テオプロジェクトが小樽市ふるさとまちづくり協働事業の助成を受けて実施した企画「百年片思」を紹介します。

.


壱 , パンフレットの製作

①防波堤の歴史について
②技術者である青木政徳について
③小説で「両腕」と喩えた伊藤整について
 などを紹介するパンフレットを600部作成し市内に配付しました。

 太陽にかざすと「百年片思」の文字が重なって、片思いが両想いになる仕掛けが施されています。紙のパンフレットは配り終えてしまったので、デジタル版をここに掲載します。

PDFデータ(7.9M)  デザイン:SAHO HARABE

エスコンフィールドのアートコンペティションにて【優秀賞】を受賞し、球場に作品が展示されているデザイナーです

.


弐 , HuG展(ハグ展)の開催

 伊藤整は防波堤を「組み合わせようとする両腕のように港を抱いている」と喩え、テオプロジェクト主宰の盛合将矢はそれを「百年の片思い」と表現しました。
 現代アーティストは防波堤を見て何を感じ、どう表現するのか。防波堤をテーマに6名の作家に作品制作を依頼し、展示しました。

参加アーティスト
佐藤T、SAHO HARABE、森谷亮介、HiNA、船戸 晴名、雨情

場所:ウイングベイ小樽4階 ジャーディカーブ
日時:2023年11月5日 ~ 2024年1月13日 (すでに終了しています)

小樽観光協会がやっている月刊小樽自身12月号にも取り上げられました。

 小樽の海が見渡せるこの廊下は通称「ジャーディカーブ」と呼ばれております。電通本社ビル、六本木ヒルズなどの設計を手掛けたアメリカの建築家ジョン・ジャーディが設計に関わっているのが理由です。
 悪天候でも気にせずに小樽の防波堤を見渡す事ができ、防波堤の工学、建物の建築、文学の感性、港の歴史、様々な要素が交差する築港エリアを舞台に、小樽の新しい文化の息吹きをここから発信したいという意図から、ここを展示場所に選びました。

.


参,子ども達との壁画制作

 場所:ウイングベイ小樽4階 

 小樽の海や防波堤をテーマに、商業施設内の壁に巨大な絵を描きました。約15名の子供にも参加してもらい、一緒に創作活動をしました。

制作の様子はこちら

3つのアプローチで防波堤の魅力に光をあてた「百年片思」

 小樽の歴史はオモシロい、でもちょっと複雑で難しい。

 だからこそ、アートのチカラを使って小樽の歴史をPOPに伝え、ディープな歴史探求への旅に出るきっかけにして欲しいと考えています。これからもテオプロジェクトは、小樽の歴史を遊び道具に見立て、ワクワクを企んでいきます。

いまでこそ「ひまわり」は約124億円の価値があると言われていますが、それを描いたフィンセント・ファン・ゴッホは、生きている間には全く評価されない画家でした。その中で唯一、その才能を認め、信じて応援し続けたのが弟のテオドルス・ファン・ゴッホ(通称テオ)だと言われています。ゴッホの死後、時代が彼の才能にやっと追いつき、その真価は広く知れ渡りました。

テオプロジェクト-TheodorusProject-は、「いまの地方に必要なのは飛びぬけた才能を持つゴッホではなく、まだ評価されない可能性を信じるテオである」。これをコンセプトに、小樽を中心に様々な企画を試している現代アートチームです。@Theodorus___P

テオプロジェクト

石川啄木と野口雨情が小樽で交差した。もしかしたら小林多喜二も、永倉新八も、伊藤整も交差点を歩いたかもしれない。明治時代の小樽にあった文学の交差点。次はいつ出現し、誰を引き寄せるのか。虚実皮膜。虚像と実像の狭間にある芸術の神髄で遊ぶ。

関連記事