質屋
「質屋」をご存じでしょうか?実際に利用された方はもう少数派なのではないでしょうか?
ご存じのように、金融業の一分野ですが、「質草」つまり品物を預けてお金を借りる、返すことができないと「流れる」、つまり転売をすることになります。買取を主体とした「ディスカウントショップ」とは異なります。
業界誌『質屋業報』
先日、市内の質屋さんがお店をしめることになり、資料収集をさせていただきました。
そこでいただいてきたのが業界誌『質屋業報』です。国会図書館の書誌情報によれば、東京質屋協同組合が昭和24(1949)年から現在まで発行しています。
いただいたのは昭和33(1958)年から昭和48(1973)年までです。この雑誌に限らず、業界誌というものは読者が限定されるため、かなりディープな内容が書かれています。
この業界誌にも「盗難証券の扱い」や「仏像や仏画」といった鑑定に必要な情報が掲載されています。連載コラムのタイトルが「ながれる」というのはこの雑誌らしいものです。「現代版質屋川柳」というコーナーもあり「子の物を 出されて質屋 目を伏せる」「アイロンを かけて質屋へ 持ってゆき」などが掲載されています。
巻末には
巻末に、各種の買取標準価格一覧がのっています。昭和33年のものには「軽二輪」(小型オートバイ)の表があり、冒頭に、名車「陸王」の名前があります。
一方、昭和48年には「電子計算機」があり、SHARPのものは「定価180,000円」となっています。生活雑貨の移り変わりをこの雑誌から読み解くことができそうです。
小樽の質屋
ちなみに、今回、資料をいただいたお店がしまったことで、令和2年9月現在、小樽市内にのこる質屋さんは一軒だけ、ということになりました。手元の資料で、昭和5(1930)年にはすでに34軒の質屋さんが営業していました(おそらく店舗数のピークは昭和30年ころと思われますが)。庶民の金融機関として、「いざとなったら駆け込む場所」として長い間機能してきた質屋さんも曲がり角を迎えているようです。