木廻しとマレク
かつて、築港のマリーナ付近には貯木場があり、いかだに組まれた原木がたくさん浮かんでいました。勝納町周辺には木材加工場や乾燥用の土場もたくさん見られました。
![昭和初期。勝納町周辺の枕木置き場](https://otaru.jp/_sys/wp-content/uploads/2020/12/cbae9b4b9dff681d7f27ffd6ee8affa7-1024x650.jpg)
昨年の夏、そこで使われていた「トビ口」などの資料をいただきました。クリーニングとさび落としの作業が終了し、チェックをしていると、初めて目にする道具がありました。
木廻し
![「木廻し」作業前の状態。](https://otaru.jp/_sys/wp-content/uploads/2020/12/3c35ca92dbb23c1c81c49132a29b783d-768x1024.jpg)
![「木廻し」:カギが回転した状態](https://otaru.jp/_sys/wp-content/uploads/2020/12/da2ff8c9be20f4ff1764acb9d93cf42b-768x1024.jpg)
棒の先端から30㎝ほどのところにL字型のカギがつけられ、先端方向に加点できるようになっています。
整理担当者がしらべたところ、これは「木廻し」という名称で、突き刺すように先端を木材にあてると、先端部分とカギで木材を挟み込み、移動などに使う、というものでした。林業の世界では現在も使用され、通販でも購入可能でした。私が驚いたのは、この構造がアイヌ民具独特の漁撈具「マレク(マレック、マレップなど)」と同じものだったからです。マレクはサケなどの大型魚類の捕獲に使用します。「木廻し」の起源は不明ですが、遅くとも江戸時代には使用されていたようです。
アイヌ民具「マレク」
一方、マレクも考古学的な調査では遅くとも16世紀には登場しています。この二つの民具はおそらく直接の系譜があるのではなく「他人の空似」であるとは思いますが、この独特の形態が、全く別の用途で生まれたことに興味が掻き立てられます。
![アイヌ民具「マレク」:カギはサケに刺さると重みで回転し、棒の先端部との間にはさまる。](https://otaru.jp/_sys/wp-content/uploads/2020/12/7f681d2fbcb86bac91911cdfecc23cd5.jpg)
マレクについてはすでに研究が進んでいますが、「木廻し」はどうなのでしょうか?少し調べてみたいと思います。