早春の山中海岸を歩く
小樽の北部、赤岩山の北側には、国定公園の指定地でもある自然のままの海岸が続きます。しかし陸路を歩くことができるのは、現在、山中海岸が唯一の場所です。森の中の坂道を20分ほど下ると、透明な海と岩浜が続く風景が広がります。遠浅の海岸はいつも穏やかで、夏の磯遊びの場所としても親しまれてきました。
スプリング・エフェメラル
そして雪解けの季節、目を楽しませてくれるのが道沿いに咲き競う小さな花々です。エゾエンゴサク、カタクリ、ニリンソウ、アズマイチゲ、キバナノアマナなど、これらは木々の葉が茂るまでのわずかな期間に現れる独特な植物群で、スプリング・エフェメラル(春のはかなきもの)と呼ばれます。山中海岸は小樽でも指折りのスプリング・エフェメラルの群生地です。
![アズマイチゲ。小樽では数カ所でしか見ることができない。](https://otaru.jp/_sys/wp-content/uploads/2020/04/477cb2567f545eb9a8dbe27eca9870f4.jpg)
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ニシン漁場の痕跡
山中海岸のもう一つの見どころが、ニシン漁が盛んだった頃の漁場の痕跡です。山中海岸にはかつて山中(やまなか)・川平(かわひら)という2つの漁場集落がありました。何時まで人が暮らしていたのかはっきりしませんが、昭和の末までは浜仕事が続けられていたそうです。今でもニシンの加工に使われた巨大な窯や、建物の土台、かまどの跡、湧き水を貯めた枡などを見ることができます。岩場の海中にも舟を入れるために手を加えた跡が見られます。
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春が過ぎ草丈が高くなると、山中海岸の景色は一変し、ニシン窯や建物の跡は覆い隠されてしまいます。花々に迎えられ、美しい風景を見渡せる早春が、山中海岸が特別に魅力的な季節です。
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