新長唄 小樽八勝之四季
小樽八景に関連した資料を当館所蔵品からまた一点掘り出しましたので、少し紹介します。
写真の資料は「新長唄 小樽八勝之四季」(明治35(1902)年発行)です。長唄ということで、三味線の曲に合わせた歌ものの歌詞ということになるでしょうか。
ちなみに、こちらは厳密には小樽八景(明治9年)とは異なる「小樽八勝」となっています。これは小樽新聞の明治31年12月14日掲載の小樽八勝を生かしたものとみられます。
その内訳は
狗峯霽雪、天宮煙檣、高島漁火、勝川涼月、稲渓秋蟲、奥沢夜雨、海雲晩鐘、花園春游
となります。
これらのうち、たとえば狗峯(天狗山)は本文ページの最初に出てきます。本文ページには他にもいくつか関連した場所がありますので、よろしければごらんください(全ページは掲載しておりませんので、8か所全ては写真内にありません)。
いわゆる「変体仮名」まじりですので、読む練習にもちょうどいい…かもしれません。
さて、八景(八勝)といえば、すぐ想定されるのは題材にした漢詩・和歌を詠む楽しみ方かと思います。日本史で(小樽のみならず)「八景」という題材を扱う場合、こういった前提から考える場合が多数です。
たとえば『小樽市史』1巻の小樽八景の紹介部分などでも、八景をモチーフにつくられた和歌紹介をしており、やはり同様です。
その一方で、形や中身が変われど小樽八景というものがこのあと令和の現代まで引き継がれ楽しまれているのは、この資料のように和歌や漢詩だけではない楽しみ方や受容の仕方もさまざまあったおかげ…でもあるのかもしれません。
ちなみに…
当館資料のお話ではないのであえて本文では触れませんでしたが、近いものに「八景常磐津」なるものもあります。比べてみても楽しいかもしれません。(『小樽案内』明治41年、国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可、108コマ目)