小町湯
信香町の銭湯「小町湯」が、2021年10月24日をもって閉店しました。ご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、明治15(1882)年創業の小町湯は、様々な研究者によって「現存する道内最古の銭湯」とされています。

当館では昭和初期の動画フィルムを寄贈いただいています。小町湯の脱衣場、男湯の内部を撮影したもので、この動画自体、全国的にも貴重なものです。

お店の伝承では明治15年創業ですが、当館所蔵の明治10年ころの絵図にはすでにこの近くで「湯屋」が開業しています。当館では小町湯の前身ではないかと推定しています。
蕎麦屋「三〼」

小町湯の正面には「三〼」の文字がみえます。小町湯さんは蕎麦屋「三〼」も経営され、現在蕎麦屋の家屋は、北海道開拓の村に移築保存され、現地には洋館部分が残されています。
現在、小樽市内の銭湯は5軒
ほんの20年前、小樽の街の特徴は「餅屋・銭湯・市場」の多さでした。銭湯についてはかつては50件以上が営業され、それが次第に減少していった平成16(2004)年に小樽市博物館では特別展で市内の銭湯を取り上げました。その時は市内で27軒の銭湯が営業されていました。小町湯さんの閉店により、市内の銭湯は5軒となります。
銭湯独自の建造物も貴重ですが、140年の歴史が途絶えることはなんとも忸怩たる思いです。「指定」などの文化財以上に、この町の魅力となっていたものが消えていく現状で、博物館がまったく無力であることを突き付けられた気持ちです。