西川家文書
2021年9月30日、小樽市教育委員会では新たな市指定文化財3件を発表しました。「西川家文書」「稲垣益穂日誌」そして「花園公園設計図」です。これらはいずれも当館の所蔵資料です。このうち「西川家文書」と「稲垣益穂日誌」はごく一部ですが、運河館の常設展示で公開しています。
この資料をのこした「西川家」とは、江戸中期から明治期を中心に、小樽周辺で商業活動を展開した、近江八幡出身の「住吉屋西川家」のことです。西川家は呉服・荒物の行商で身を立て松前(福山)へ出店、のちにヲショロ・タカシマの場所経営を請け負います。明治期に入っても小樽周辺にとどまり、漁場経営、缶詰製造などを試みています。
今回指定された文書群は総数で約300点。多くが幕末からの商業・漁場経営関係の文書です。この文書は西川商店忍路支店が保管していたもので、昭和17(1942)年に小樽市に寄贈され、昭和31(1956)年に小樽市博物館が設立されると、移管されたものです。
洋式帳簿
今回指定された西川家文書は、和紙を綴じた江戸時代以来の文書群の他、明治に入っていち早く導入した洋式帳簿(複式)が100冊ほど含まれています。
商店の記録ですので、帳簿や日報などが中心ですが、それらの文書を分析することによって、幕末から明治の小樽の暮らしが浮かび上がってきます。
西川家文書の重要性
帳簿(洋式帳簿を含む)からは、物価、嗜好品を含む生活物資の品目、流通ネットワークの広がりなどを知ることができますが、細かい分析作業が必要で、まだまだ全容の解明には至っていません。
日記・日報類には天候、潮位などが記入されている点が、いかにも廻漕業を営んでいた西川家らしいものとなっています。また、詳細なものではないのですが、街の出来事や祭礼・災害に関することが記されています。これらの文書群はすでに「日本遺産 北前船」の構成要素に認定されていますが、今回の文化財指定により、その重要性が多くの方に認識していただければと思います。
なお、和綴の文書群についてはデジタル化が終了しています。この資料についてのお問い合わせは当館までお寄せください。