稲垣益穂日誌
令和3年に小樽市指定文化財となった『稲垣益穂日誌』(以下『稲垣日誌』)は、明治36年から昭和10年にかけての小樽の市井を記録した貴重な記録です。今回刊行された翻刻第37巻は大正13年5月から10月にかけての日誌です。

大相撲巡業
癖のある筆文字で書かれているのですが、時折、味のあるスケッチが挿入されています。

スケッチも稲垣益穂による
『稲垣日誌』37巻より
今回の大正13年の6月には東京の大相撲が巡業に来樽しています。無類の相撲好きであった稲垣先生も連日相撲見物に出かけています。イラストは出羽ヶ嶽と綾鬼との「初っ切り」の風景です。

『稲垣日誌』37巻より
出羽ケ嶽は昭和初期には関脇を務めましたが、身長2m、体重200kgをこえる巨躯の力士として有名でした。このイラストでもその大きさが見事に表現されています。
火星大接近
また、大正13年は火星が大接近した年でもありました。この年の最接近は8月22日で、20世紀では最も近づいたものでした。

『稲垣日誌』37巻より
「昨夜十二時過起きて見ると、南方の大空に火星が輝いて居る。殆ど金星に等しい大きさである。今年は地球と火星とが最も接近する年で、こんな事は百年位に一度あるといふことで、世界の天文学者は此の際大に火星を研究する為に準備をして居るといふことである。」(8月19日)
「火星は南方の中天に赤い色を誇って居る如く、四辺を睥睨する如く、倨然として鎮座して居る。実に壮観である。」(8月25日)
などの記述が見えます。
閲覧したい方は…
『稲垣日誌』は博物館の他、図書館でも閲覧できます。また、ご希望の方には頒布もしております。ぜひ一度手に取っていただき、大正時代の小樽の雰囲気を楽しんでいただきたいと思っています。