スギタニルリシジミ
今年(2022年)の春は天気の良い日が続きましたが、その分小樽の野山はやや乾燥気味で、いつもの年と比べて生き物の姿は少なめだったようです。そんな中で、早春の蝶の代表格、スギタニルリシジミは例年より少しだけ見かける機会が多かったように感じます。
スギタニルリシジミは4月下旬~5月上旬に現れる小型の蝶で、食草であるキハダやミズキ、トチノキが生える渓谷の森に生息します。はねの表面を彩る深い青色の美しさと、豊かな森にしかすまない希少性によって、愛好家にも人気の高い蝶です。小樽では天狗山など南部の山地に広く生息しますが、その姿を見るチャンスは一年の中でもごく短い期間に限られます。
名前の由来
スギタニルリシジミの「スギタニ」とは数学者で蝶の研究家としても著名な杉谷岩彦博士(旧制第三高等学校=京都大学教授)に由来します。
スギタニルリシジミは大正7年に杉谷によって京都の貴船(きぶね)で発見され、北海道帝国大学の松村松年によって新種として報告されました。当時の貴船は日本屈指の昆虫の宝庫として知られていましたが、まだ鉄道も通っておらず、京都市内からは半日掛かりの道のりだったそうです。杉谷の採集した標本は模式標本として今も北海道大学に収蔵されています。