現金輸送車「マニ30形2012号」
現在日本銀行では一万円券、五千円券、二千円券、千円券の4種類の銀行券(お札)を発行しています。2019年(令和元年)の大晦日、一般家庭や企業、金融機関などで年越しした銀行券の残高は、合計で112.7兆円、枚数では173.1億枚でした。【日本銀行HP「教えて!にちぎん」から】
マニ車とは
古く傷んだり新しい銀行券は、日本銀行の本店と各支店の間を運搬しており、その輸送に使われていた鉄道車両が「マニ車」と呼ばれるマニ34形(のちにマニ30形に変更)でした。当館には「マニ30形2012号」が展示・保存されています。郵便車と同じ荷物客車のため、製造時の客車の形式記号があてはまります。「マニ」の意味は、重量区分を示す「マ」(42.5t~47.5t未満)と用途を示す「ニ」(荷物車)からついたものです。

2004(平成16)年3月23日
撮影:岸由一郎氏(撮影時 交通博物館学芸員)
製作の経緯
銀行券輸送専用車は輸送量の増加にともなう現金強奪などの犯罪から守るため1949(昭和24)年に6両製作(この時の形式はマニ34)、使用が開始されました。それまでは通常の鉄道貨物車で輸送されていましたが、専用車の登場で移動時間の短縮や安全性の向上、車内設備も整い、貨車輸送時の問題が解決されました。

マニ車の廃車
その後、冷暖房装置などの改造が行われ1970(昭和45)年に形式をマニ30に改称、1978(昭和53)年に3両と翌年に3両が新製され12両の専用車で運用されました。最初の6両は1980(昭和55)年度までに随時廃車、残りの6両は鉄道での現金輸送が廃止となる2003(平成15)年度で用途廃止、解体されることになりました。

2004(平成16)年6月21日
日本で現存する唯一の車両が小樽で保存
輸送の安全性を守るために運行ダイヤ、そしてその存在自体も秘密にされていたマニ車ですが、鉄道輸送史を語る貴重な歴史資料として小樽市で1両だけ保存することになり、2004(平成16)年に日本で現存する唯一の車両が公開されることになったのです。

2004(平成16)年6月23日