聖降誕祭祝賀晩餐会
年末も近づいてきたということで、今回は昭和10(1935)年のクリスマスメニューをご紹介します。

メニュー中の「蕃柿」とはトマトのこと。パイのソースには「トマトソース」と書いてあるので、何らかの区別があったのでしょうか。
「第17回 聖降誕祭祝賀晩餐会」と題された見開きの紙片で、おそらく封筒に入れた勧誘のDMのようなものだったのでしょう。
北海ホテル

中央通を挟んだ右側には野口ビル(北の誉)がある。北日本随一の経済都市、小樽を代表する光景の一つであった。
場所は中央通と第一大通りの交差点(現在のグリーンホテル別館付近)にあった北海ホテル、主催者名に館内のカフェ「モンパリ」の名前があることから、カフェを使ったものとも考えられます。

「モダン」「ハイカラ」のイメージがあるホテルであった。

華やかで上品、というイメージ戦略であったのであろうか。下のキャプションをよむと、「ビーヤサロン」とある。
メニューはオーソドックスなフランス料理のコースとなっていて、メインは「七面鳥のロースト」という欧米では定番のクリスマス料理となっています。「大正小樽のお献立」の資料によれば、大正12(1923)年の段階で、北海ホテルには少なくとも3人の本格的フランス料理のコースを出す料理人がいたことがわかります。また「第17回」とあることから、遅くとも大正8(1919)年にはこのようなクリスマスパーティーが行われていたことになります。
12月25日は祝日?!
クリスマスは言うまでもなく、イエス・キリストの誕生を祝う、キリスト教の重要な宗教行事です。明治後期からは市内の各教会が市中で讃美歌などをうたう催しを開催していますが、宗教行事とは関係のない「祝祭」としてのクリスマスも早くから一般化していたようです。一説には、輸入食品を扱う明治屋が銀座店でキャンペーンを行ったことがきっかけともいわれますが、小樽でも明治末にはそういう催しがあったようです。
このメニューのあいさつ文にも「お父様のおつむにのったトルコ帽」「豪華な瓔珞がホールに食堂に五彩の花を散らす」といった表現があり、本来の宗教行事とは異なるものであったことがわかります。
ちなみに案内文に12月25日(祭日)とありますが、意外なことに、戦前は12月25日はクリスマスの祝日となっていました。おそらく欧米諸国に合わせたものであったのでしょう。
さて、メニューの復元は…
このメニューはかなり高カロリーで濃厚な料理がつづきます。復元していただいても、需要はいかがでしょうか。