ニホンザリガニがすむ小樽のまち
ニホンザリガニは日本に生息する唯一の在来のザリガニです。他に外来種のアメリカザリガニ、ウチダザリガニの2種が北海道では分布を拡大しつつありますが、小樽では今の所これらの侵入は確認されていません。小樽でザリガニと言えば、ニホンザリガニのことです。
市民にとって身近な生物
ニホンザリガニは河川源流部などの冷たく澄んだ水にすむ生物で、絶滅が危惧される希少種です。
しかし小樽では市街地にも数多くの生息地があることがわかっています。市中心部の色内、富岡、花園、住宅地が広がる入船、緑、桜、新光などにもニホンザリガニの生息地が点在し、ザリガニがいるようには思えない人工的な環境でもその姿を見かけることがあります。
小樽市民にとってザリガニは生活圏に共存する身近な生物の一つです。このことは他の街にはない、小樽ならではの自然の特徴と言えるかもしれません。
「坂の町」小樽は平地が少なく、緩やかに傾斜した丘陵地の上に市街地が形成されています。家々は階段状に造成された土地に建ち、隣の家の屋根を見下ろすような場所も少なくありません。
小樽でザリガニがすむ典型的な場所は、こうした家並みの間にある大小の段差・崖地の周辺です。
地層の断面である崖地では、多くの場所で地下水が湧水となって流れ出ています。20度以下の冷たい水温でなければ生きられないニホンザリガニにとって、湧水の周辺は市街地であっても生息に好適な環境です。
また崖地の周辺には、開発を免れた小規模な雑木林や草やぶが豊富に残されています。これらは日差しを遮り、ザリガニの餌である広葉樹の落ち葉を供給します。 このような崖地に沿って見られる緑地(崖線緑地)は小樽の市街地を縫うように広がり、ザリガニだけでなく多くの生物の生活空間になっています。
小鳥たちが休み、小さな草花が咲き、秋には虫たちの鳴き声が聞こえてくる場所、あまりに身近で気に留めることも少ないかもしれませんが、こうした緑地が生活の側にあることは、小樽の風土を形作る重要な要素だと思います。