機関車庫三号
博物館本館には国指定重要文化財の旧手宮鉄道施設の1つとして機関車庫三号があります。
この建物はアメリカで主に鉄道や関連する建物を学んだ平井晴二郎が建設に関与したとされ、明治18年に竣工しました。平井は北海道庁旧本庁舎の設計や東京駅新築にも関わっており、当時では有数の煉瓦造の精通した人物と言えます。
越屋根
機関車庫三号は扇形の平面をとっており、フランス積みの煉瓦や中心部を支える八角形の石柱などが見どころです。
屋根の上には小さな切妻屋根のような「越屋根」が設けられています。これは室内の採光のために設けられました。一般的に越屋根は換気のために用いられることもあります。
機関車庫三号の越屋根の由来は?
さて、越屋根は日本の伝統的な屋根の1つですが、機関車庫三号の越屋根は何に由来しているのでしょうか?
国内の西洋建築を調べてみると明治5年竣工の「富岡製糸場 繰糸所」も煉瓦造であり、越屋根が設けられています。この建物はフランスの生糸検査人の企画指導のもと、同じくフランスの横須賀造船所技師によって図面が作製されています。しかし、この生糸検査人は日本の養蚕農家を多数観察してから企画指導を行ったため、越屋根のルーツが西洋なのか日本なのかは明確には今回判断がつきませんでした。しかし、機関車庫三号が建つ前に西洋風の越屋根付きの建物が国内に建っていたことは事実です。
また、機関車庫三号が建つ以前の写真は今回みつけられませんでしたが、アメリカでは近い時期に同様に越屋根を持つ機関車庫が複数みられます。機関車庫は機関車を収容するために大きな面積を有しており、その中で整備等を作業を行うため、明かりや換気の意味で越屋根をはじめとした窓が屋根部分に必要だったのでしょう。
機関車庫三号は煉瓦造で西洋風の建物であるため、平井晴二郎が日本の伝統的な越屋根をこの建物に付けようとしたと考えるよりは、既に国内にあった西洋風の越屋根付き建築もしくはアメリカで鉄道を学んだ際にみたであろう現地の越屋根付き機関車庫を踏襲したのではないでしょうか。
建物は既存建物を踏襲したり、反対に逸脱しようとしたりと、関わりあって計画されてきた歴史があります。そういった歴史を踏まえるとより建物を深く知ることができます。