階段の支柱飾り
旧日本郵船株式会社小樽支店の階段室に足を踏み入れれば、手摺や支柱飾りが飴色に輝き、見上げれば繊細な天井中心飾りや天井の縁のモールディング(帯状の装飾)がみられます。
何に見えますか?
さて、この支柱飾りは何をモチーフにしているのでしょうか?

筆者の第一印象は植物のつぼみでした。本建物の設計者佐立七次郎の下で建築を学んでいた櫻井忍夫が設計した旧田中家住宅(HP:https://www.kawaguchi-bunkazai.jp/tanaka/)でも似た形状の支柱飾りがあり、そこでは明確な資料はありませんが「アカンサスの蕾」と言い伝えられているそうです。アカンサスとは西洋美術や建築のモチーフに頻繁に用いられているアザミに似た葉を持つ植物であり、旧日本郵船株式会社小樽支店の会議室壁紙やキーストーン(アーチの頂上部に用いる要石)など随所の装飾にもみられます。

このような支柱飾りは他の建物ではアーティチョーク(ヨーロッパでよく食べられるアザミの仲間)や松ぼっくりと考えられている例もあります。菊などのお花の蕾のようにも見えますね。
設計者佐立七次郎の資料は現在に残っているものは少なく、図面、スケッチや文章など、設計意図が汲み取れそうな資料はほとんどありません。

そのため、この支柱飾りが何をモチーフにされているのかはなかなか明確にはできませんが、100年以上前に彼が何をモチーフに設計をしたのか、考えを巡らせるのも面白いですね。